「文章力がない」と、小説を書くことを諦めていませんか?
私自身「文章力がないから」と悩み、書けない時期がありました。
しかし、小説を書くのに文章力は必要ありません。
むしろ過剰な文章表現は邪魔なぐらいです。
本記事では、小説の文章が魅力的に見える理由と創作に必要な文章力について解説しますね。
文章力と作品の面白さは関係ない
ちょっと漫画で考えてみましょう。
「絵が下手なのに、メチャクチャ面白い漫画」ってありませんか?
エッセイ漫画とか、絵がゆるいのに、癖になったりしますよね。
反対に「絵がメチャクチャ上手なのに、全然面白くない漫画」もありませんか?
読んでガッカリしたどころか、読んだことすら忘れて再読し、またガッカリするなんてことも。
絵の上手さは、漫画の面白さと無関係です。
もちろん絵の上手さも大事な魅力の一つなので、無視することはできません。しかし面白さやストーリーの本質的な部分には、絵の上手さは無関係。
つまりある程度の絵が書けるなら、面白い漫画を描くことができるのです。
同様に、小説の面白さと文章力は無関係。
絵がない分、漫画より重要ではありますが、語彙力や難しい言い回しがないからといって、つまらない作品にはなりません。
もし「難しい文章=作品の面白さ」だったら、世の児童文学はすべて駄作になってしまいます。
しかし児童文学で、優れた作品はたくさんありますよね。
それに芥川龍之介や太宰治の文章は、読みやすいのに面白いとは思いませんか?
小学生でも読めるのに、多くの大人を魅了しています。
もちろん文章を書く以上、必要最小限の文章力は必要です。
文末は「。」で〆るとか。
しかし日常的に文章を読み書きする日本人なら、その点は問題ないと思います。小説じゃなくても、日常的に文章は使いますよね。SNSやメールなど、使わない人の方が少ないと思います。
つまり小学生以上の日本人なら、問題なく書けるということです。
気になるようなら、小学生向けの作文の書き方ルールを再確認しましょう。
論文や公募など、何か特別な条件がない限りは、日常レベル文章力で十分です。
文章は伝わることが最優先
書く上で一番重要なことは「相手に伝わること」です。つまり、伝われば何でもいい。
伝わるなら、平易な文章でも凝りまくった文章でも、どちらでも構わないのです。
メチャクチャに聞こえるかもしれませんが、読んだ相手が理解できなかったら、意味ないですよね。
例えば、次の文章、どちらがわかりやすいですか?
例題1
南米より訪れし漆黒の宝玉を丁寧に挽き、子のように手をかけ、孫のように温かい目で成長を見守った漆黒の流体を喉奥に流し込んだ時、この世のものとは思えぬ至福に包まれた
例題2
豆から挽いたコーヒーは格別だ
断然後者ですよね(笑)
前者は読むのも嫌だったと思います。
こだわりまくった表現が一ミリも通じなかったら、悲劇でしかない。
わかりにくい表現を使うぐらいなら、素直にそのまま書いてしまいましょう。
小説を魅力的にする「表現力」とは
小説の面白さに文章力が関係ないことはわかりましたが、一つ疑問が残ります。
なぜ簡素な言葉を使っているのに、児童文学や芥川龍之介は魅力的に見えるのでしょうか?
私も長年疑問に思っていましたが、一番の要因は表現力です。
作者の脳内には、作品イメージがあるでしょう。一方で、読者の脳内には、読者の作品イメージがあります。
その差をなくせたら、一番伝わったことになりますよね。
作者のイメージがそのまま読み手の脳内で再生できるような言葉をチョイスしましょう。
表現力のある文章とは
私は表現力のある文章とは「その場を表すのに最も即した言葉」が使えている文章だと考えます。
最適な言葉が、一番理解しやすいからです。
例を使って考えてみましょう。
「家族が緊急搬送された」と連絡が来た。あなたは急いで病院へ向かう。
その場面をどう表現するでしょうか?
- すぐ病院へ行った
- 慌てて病院へ向かった
- すぐさま病院へと駆けつけた
- はやる気持ちを押さえて、タクシーに乗り込んだ
どれが一番しっくり来るでしょう?
どれがあなたの気持ちに近いですかね?
1よりも4の方が「焦る気持ち」「行くスピード感」が出ていると思いませんか?
しかし、どれも難しい言葉は使っていません。
場面をイメージし、その映像に最適な言葉を探しただけです。
もちろん多少の語彙力がないと、書けない表現もあるでしょう。
しかし読者が理解できない言葉なら、意味がない。
あなたが日常使う言葉で、もっとも最適な表現をしてみてくださいね。
表現力を高める4つのポイント
表現のある文章を書くコツは、次の4つです。
- 動詞をこだわる
- 視覚的表現を使う
- 感覚に訴える言葉を使う
- 自分が感じたことを表現する
1、2については、シナリオの文章がとても参考になります。
シナリオは映像化を前提として書かれます。
そのため、読んでいて脳内に映像が浮かびやすい利点があります。
慣れないと読みづらいでしょうが、表現を拾うつもりで読むのがオススメですよ。
3、4については、主に小説で効果を発揮するでしょう。
小説は主人公に感情移入して読むもの。
主人公が感じたことをリアルに聞き留めれば、まるで自分が体験したかのごとくリアルに感じます。
特に4は、あなたにしかできない部分です。
感じ方って、人それぞれですよね。
「この人はこの感情を、こんな風に表現したのか!」と思わせられたら、読者はあなたのファンになるでしょう。
表現力を磨くには「例えツッコミ」最強説
ちなみに、私は普段から「例えツッコミ」をしています。
あえて別の言い回しで何かを表現する。
完全に相手を笑わせたいだけなのですが、慣れると楽しいんですよね。
もちろんウケない時もあります。
ウケない理由は、面白くないか相手に理解されていないか。
相手のウケ具合で「この表現使えるな」と判定できます。
ただ下手な表現だとメチャクチャ恥ずかしいので、お喋りが好きな人だけお試しください(笑)
まとめ
小説を書くのに文章力はいりません。表現力を磨きましょう。
あなたにしかできない発想で、物事を書き捉えてください。
よく「本を読めば、文章力は身に付きますか?」と聞かれますが、私は50点の回答だと思います。
状況をうまく捉え、適切な言葉にする。相手にわかるように書く。
本では言葉を学べても、状況の捉え方は学べません。
文章だけでなく、心の動きや感じ方を磨きましょう。
そして相手にわかるように、言葉で表現してみてくださいね。
推薦図書:井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室
人により文章力が違うので、まずは一冊手に取るのがオススメ。他人の添削される様子が学べるので、自分の文章力を相対的に理解できそうですよ。