「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」は同じ作品【書評】

先日「ニッブルズウィックの牧師」という本を読みました。
※詳しくは書評を書いたので、こちらの記事をご覧ください。

「ニッブルズウィックの牧師」は言葉遊びがユニークな本なのですが、日本語訳によって内容が異なります。現在2冊あるのですが、それぞれに違いがあって面白い。

しかし、一つ問題が。
「こちらの本を読めばもっと楽しめる」と同書内で紹介された本があるのですが、2冊ともタイトルが違うのです。

そこで、本記事では「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」について解説します。

目次

ESIO TROTとは

まず本書で紹介する「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」は、同じ作品です。

「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」の原題は「ESIO TROT」。1990年9月3日に出版されました。

著者はロアルド・ダール。
「チャーリーとチョコレート工場」の原作を書いた人として有名ですね。本書はダール最後の作品と言われています。

日本語訳で刊行されている本は、2冊あります。
そのタイトルが、「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」なのですね。

「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」のあらすじ

両方とも同じ作品ですが、一部だけ内容が異なります
違いを理解するためにも、まずはあらすじを見ていきましょう。

  1. 【説明】物語の時代背景
  2. 寂しい老紳士がいる
  3. マンション下階の未亡人に恋する
  4. 誘いたいが、誘えない
  5. 未亡人がペットの亀を成長させたいと知る
  6. 亀を成長させる方法を知っていると提案
  7. 未亡人に呪文を教え、実行させる
  8. 老紳士、ペットショップで大量の亀を買う
  9. より少し大きい亀を選び、ペットと交換する
  10. 亀の交換を何度か繰り返す
  11. ある日、未亡人から「成長した」と喜ばれる
  12. 成長した亀が家に入れなくなり、未亡人悩む
  13. 老紳士、小さくする呪文を教える
  14. 少し小さい亀に交換する
  15. ちょうどいい大きさになり、未亡人大喜び
  16. 老紳士、勢いでプロポーズ
  17. プロポーズが成功し、二人は幸せに暮らす
  18. 【後日談】ペットがどうなったか

ざっとした流れですが、作中に登場する呪文が、訳によって味わいが変わってくるのです。

「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」の違い

「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」は、共に評論社より刊行されています。

「ESIO TROT」の翻訳者は次の通りです。

  • 恋のまじない、ヨンサメカ:久山太一
  • ことっとスタート:柳瀬尚紀

両者とも、それぞれ「ニッブルズウィックの牧師」を訳しています。

「ニッブルズウィックの牧師」の日本語訳タイトルも異なるのですが、説明が長くなります。詳細は訳者で内容が全然違う【書評】ニッブルズウィックの牧師をご覧ください。

次に、それぞれの特徴と感想を見ていきましょう。

「恋のまじない、ヨンサメカ」の感想

本書は子供向きという印象です。

ひらがなが多い&文字が大きいので、読みやすいでしょう。

作内の言葉も柔らかく、呪文も童謡のようですね。

「やさしい文章が読みたい」という人には、「恋のまじない、ヨンサメカ」がオススメです。

ちなみに、本書は本文のみ。作品解説などの後書きはありません
面白いのですが、読後にちょっとした物足りなさを感じました。

「ことっとスタート」の感想

本書は大人向けという印象です。

適度に漢字が使用され、字も小さめ。普段から読書をする人なら、こちらの方が読みやすいでしょう。

呪文も急かすようで、言葉遊びよりも暗号といった趣があります。

「読書を楽しみたい」という人には、「ことっとスタート」がオススメです。

ちなみに、本書巻末には訳者・柳瀬尚紀さんの空想短編小説が載っています。本編とは関係ないですが、なんだか得した気分になれます。

「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」は同じ作品

呪文の一部が違いだけで、「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」の内容は同じです。

しかし日本語訳によって、味わいが大きく変わります。ぜひ読み比べて、作品世界を味わってくださいね。

推薦図書:こちらゆかいな窓ふき会社

多数の名作を抱えるロアルド・ダール。私が「すごい作家だな」と思ったのが、本書です。一人称と三人称の切り替えを学ぶため、書き写ししています。児童書ですが、よければ読んでみてください。

宮本くみこ
ライター
小説・シナリオ・エンタメを愛しています。小説書けずに苦節20年→脚本修行のため公務員辞めて上京→なんか違うと絶望→小説の真髄発見。普段は占いライターしながら小説・シナリオを書いてます。目標は国際アンデルセン賞受賞。「私自身が最高の物語」と自負してます。
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