一人称小説には「種類」がある|書き方と特徴、注意点まとめ

一人称の小説が上手く書けない

一人称の小説を書いていて、視点がブレませんか?

実は「一人称の小説」といっても、語り口は様々です。

本記事では、一人称小説の種類について解説しますね。

違いを押さえることで、一人称の小説がグッと書きやすくなりますよ。

目次

一人称小説の種類

「自分目線で書けばいい」と思いがちな一人称。しかし次のように書き方が分類されます。

  1. リアルタイム
  2. 後日談(口頭)
  3. 報告書(文書)
  4. 伝聞

書き方が混ざると、視点や時節がバラバラになります。
読者にとって読みづらくなるので、どのパターンで書くか事前に決めましょう。

リアルタイム

主人公が今まさに体験していることをリアルタイムで語る形式です。

経験も今、語るのも今。そのため、読者と同時に物語世界を知っていけます
キャラ&読者との距離も近づくので、一番オススメな書き方です。

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台風中継

今の状況、気持ちをそのまま書けます。台風が今後どうなるかわかりませんが、今の状況から「こうなるだろう」と予測するのは可。

この時の読者は「放送を見ている視聴者」になります。

書く時の注意点

未来を知っているような書き方はできません。
だって今まさに体験中で、未来がどうなるかなんて主人公は知らないのですから。

例えば、「失敗した未来」が待っていたとします。

この時「あの頃は成功すると思ってた」といった表現はできません。
ただし「成功する」と思いながらミスリードし、「失敗した」なら可能です。

「まさか、ああなるなんて…」「この時は予想できなかった」
これらのような、現在を過去として振り返るような記述はNGです。

後日談

過去の出来事を、主人公自身が語る手法です。

主人公はすべてを知っているので、振り返る形ですね。時系列ではなく、主人公なりにエピソードを編集してOK。自分が知らない情報も「後で知ったけど」という形で補えます。

なお、語り時点に時間軸が追いつき、途中からリアルタイムで物語が進行するのも可能。むしろ「続きどうなるの?」と気になります。小説じゃありませんが、「フォレストガンプ」がいい例です。

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飲み会で上司が語る武勇伝

興味がないと、聞いてる方はたまったもんじゃない。相手の注意が引けるよう、語り方を考えましょう。

ちなみに、後からいくらでも美化できるんですよね。創作でも現実感がなくならないよう注意が必要です。

書く時の注意点

後日談は若干温度が下がります。リアルタイムより緊迫感が出ませんね。

また、渦中であれば長々と書ける部分も、後日談だと冗長に感じることも。
逆に不要な部分は時間を飛ばせるので、そういう意味では楽ですけどね。

ただし時間を飛ばして、大事なことを伝え忘れないよう注意。伏線として記載しておきましょう。
唐突に登場すると「伏線だ」と読まれやすいので、自然に情報提示できるよう工夫してください。

報告書(文書)

後日談の文書バージョン。「これまでの出来事を記す」といった形で書きます。

主人公が書く目的は様々です。上司への報告書もあれば、事件記録でもあるでしょう。
自分のために書いたかもしれないし、親友に伝えたかったのかもしれません。

「誰のため」「何のため」を意識することで、適した書き方ができます。

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日記や手紙

特定の誰かに読ませるため、書き手は書いています。だからその人に向けて書いてみましょう。

実際に読むのは読者なのですが、書く相手によって書き方が変わります。それが味となり作品に独自性が生まれますよ。

書く時の注意点

日記と手紙では、書き方が大きく変わります。
また、自分のために書いたのか誰かのために書いたのかで、語り口も大きく変わるでしょう。

また、文書が肝となるため、文書が下手だと味わいが薄れます。様々な文書の書き方を学んでおきましょう。

文書形式は、小説のみの手法です。映像を味わうシナリオには、応用しづらいでしょう。

伝聞

ちょっと変わった一人称として、伝聞をご紹介します。

伝聞は、自分の話ではなく「他人の話」をします。しかし語り手自身も当事者であるため、まったく無関係ではないのですよね。

伝聞のパターンに、次のようなものがあります。

  • 昔話を話者が語る
  • 事件当事者が、事件概要について語る

基本的に、小説内での主人公は「脇役」です。しかし語っているのは、脇役である主人公というパラドックスが生まれます。

他人の話をしているのですが、時折自身の考えをねじ込んできます。他人の話をするのであれ、主人公は「この話を語っている人」になります。

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・昔話の語り手
・友人の面白エピソードを誰かに語る

「誰か」の話なのですが、語っているのは「私」です。誰かのことはわからないので、あくまで「私」が思っていることを書きましょう。

誰が主人公か、見失わないようにしてくださいね。

書く時の注意点

「誰の話か」「語るのは誰か」を分離しましょう。でなければ、読み手は誰が主人公かわからなくなります

あくまで「脇役である主人公が語る」のだと心得て書きましょう。

三人称の手法と被っているので、他一人称よりは書きにくいかもしれません。
ただし慣れれば、高度な作品作りが可能となるでしょう。

どの一人称パターンで小説を書くか決めておこう

本記事のまとめは、次の通りです。

  • 主人公と話者の関係を考える
  • 今の話か過去の話かで、語り口が変わる
  • 「この話を誰にしているか」で、語り口が変わる

書き分けるには、感覚を掴むことが大事です。
ぜひたくさんの小説を読んで「他の人はどう書いているか」を学んでみてください。

そうすることで、あなたの物語に最適な語り口が見つかりますよ。

推薦図書:フォレスト・ガンプ

「リアルタイム」と「後日談」が見事に融合した作品。映像ですが、とても勉強になります。面白いのに感動するので、私も大好きな一作です。未視聴の方はぜひ。

宮本くみこ
ライター
小説・シナリオ・エンタメを愛しています。小説書けずに苦節20年→脚本修行のため公務員辞めて上京→なんか違うと絶望→小説の真髄発見。普段は占いライターしながら小説・シナリオを書いてます。目標は国際アンデルセン賞受賞。「私自身が最高の物語」と自負してます。
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