先日「ニッブルズウィックの牧師」という本を読みました。
※詳しくは書評を書いたので、こちらの記事をご覧ください。
「ニッブルズウィックの牧師」は言葉遊びがユニークな本なのですが、日本語訳によって内容が異なります。現在2冊あるのですが、それぞれに違いがあって面白い。
しかし、一つ問題が。
「こちらの本を読めばもっと楽しめる」と同書内で紹介された本があるのですが、2冊ともタイトルが違うのです。
そこで、本記事では「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」について解説します。
ESIO TROTとは
まず本書で紹介する「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」は、同じ作品です。
「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」の原題は「ESIO TROT」。1990年9月3日に出版されました。
著者はロアルド・ダール。
「チャーリーとチョコレート工場」の原作を書いた人として有名ですね。本書はダール最後の作品と言われています。
日本語訳で刊行されている本は、2冊あります。
そのタイトルが、「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」なのですね。
「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」のあらすじ
両方とも同じ作品ですが、一部だけ内容が異なります。
違いを理解するためにも、まずはあらすじを見ていきましょう。
- 【説明】物語の時代背景
- 寂しい老紳士がいる
- マンション下階の未亡人に恋する
- 誘いたいが、誘えない
- 未亡人がペットの亀を成長させたいと知る
- 亀を成長させる方法を知っていると提案
- 未亡人に呪文を教え、実行させる
- 老紳士、ペットショップで大量の亀を買う
- より少し大きい亀を選び、ペットと交換する
- 亀の交換を何度か繰り返す
- ある日、未亡人から「成長した」と喜ばれる
- 成長した亀が家に入れなくなり、未亡人悩む
- 老紳士、小さくする呪文を教える
- 少し小さい亀に交換する
- ちょうどいい大きさになり、未亡人大喜び
- 老紳士、勢いでプロポーズ
- プロポーズが成功し、二人は幸せに暮らす
- 【後日談】ペットがどうなったか
ざっとした流れですが、作中に登場する呪文が、訳によって味わいが変わってくるのです。
「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」の違い
「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」は、共に評論社より刊行されています。
「ESIO TROT」の翻訳者は次の通りです。
- 恋のまじない、ヨンサメカ:久山太一
- ことっとスタート:柳瀬尚紀
両者とも、それぞれ「ニッブルズウィックの牧師」を訳しています。
「ニッブルズウィックの牧師」の日本語訳タイトルも異なるのですが、説明が長くなります。詳細は訳者で内容が全然違う【書評】ニッブルズウィックの牧師をご覧ください。
次に、それぞれの特徴と感想を見ていきましょう。
「恋のまじない、ヨンサメカ」の感想
本書は子供向きという印象です。
ひらがなが多い&文字が大きいので、読みやすいでしょう。
作内の言葉も柔らかく、呪文も童謡のようですね。
「やさしい文章が読みたい」という人には、「恋のまじない、ヨンサメカ」がオススメです。
ちなみに、本書は本文のみ。作品解説などの後書きはありません。
面白いのですが、読後にちょっとした物足りなさを感じました。
「ことっとスタート」の感想
本書は大人向けという印象です。
適度に漢字が使用され、字も小さめ。普段から読書をする人なら、こちらの方が読みやすいでしょう。
呪文も急かすようで、言葉遊びよりも暗号といった趣があります。
「読書を楽しみたい」という人には、「ことっとスタート」がオススメです。
ちなみに、本書巻末には訳者・柳瀬尚紀さんの空想短編小説が載っています。本編とは関係ないですが、なんだか得した気分になれます。
「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」は同じ作品
呪文の一部が違いだけで、「恋のまじない、ヨンサメカ」と「ことっとスタート」の内容は同じです。
しかし日本語訳によって、味わいが大きく変わります。ぜひ読み比べて、作品世界を味わってくださいね。
推薦図書:こちらゆかいな窓ふき会社
多数の名作を抱えるロアルド・ダール。私が「すごい作家だな」と思ったのが、本書です。一人称と三人称の切り替えを学ぶため、書き写ししています。児童書ですが、よければ読んでみてください。