小説とシナリオ、何が違う?|6つの違いと特徴まとめ

小説とシナリオって、何が違うんですか?

先日、小説講座に寄せられた質問です。

小説とシナリオ(又は脚本)、似ているようですがかなり違います。

本記事では、小説とシナリオの大きな違いをご紹介します。

なお、シナリオでも映画・テレビ・ラジオ・演劇・ゲームで、それぞれ特徴があります。ジャンルごとの違いはいずれじっくり説明するので、しばしお待ちくださいね。

目次

小説の特徴、シナリオの特徴

小説とシナリオ、それぞれの特徴は、次の通りです。

  • 小説:単独で完結する文学作品
  • シナリオ:チームで作品を作るための設計図

その上で、次のような違いがあります。

小説とシナリオの違い

小説とシナリオの違いは、次の通りです。

  1. 映像にできるか
  2. 心情が直接書けるか
  3. 書き言葉・話し言葉
  4. 作品の決定権
  5. 売れる必要性
  6. 大多数の人に好かれるか

それぞれ解説していきます。

映像にできるか

一番大きな違いは、映像があるかないか

小説は何を書いてもOK。脳内で味わうものなので、連想できるものなら何を書いても許されます。

しかしシナリオは、映像にできるものしか書いてはいけません。

映像を取るための指示書なので、映像を伴わないイメージや抽象的な表現はNG。

また、予算がかかり過ぎる脚本も好かれません。

CGで何でも映像化できる時代になりましたが、金銭や大人の事情で映像化できないケースもあります。

シナリオを書く時は、映像及び費用面含め「映像化できるかどうか」を考慮してください。

なお、ラジオドラマは比較的自由です。映像がありませんからね。

ラジオドラマは、小説・シナリオとの中間くらいに思っておきましょう。

心情が直接書けるか

映像化に伴い、心情描写の扱いが大きく変わります。

小説は心情をありありと書くことができます。

第三者の心情を書いてはいけない等の制限はありますが、何を書いてもOK。

むしろ小説では、心の動きを具体的に書く必要があります。

一方シナリオは、心情を直接表現できません。

心情を映像化するために、何かしらの形にして思いを伝える必要があるのです。

シナリオ的に心理描写を書く時は、次のようなテクニックを使います。

  • セリフにする
  • 行動で示す
  • 小道具を使う(シャレード)

これらは一例です。長くなるので、詳細はまた別の機会にご紹介させてください。

上記描写に共通するのは「不自然にしないこと」。

悲しいからといって「私、悲しいんです!」という直接言う人、実生活にあまりいませんよね。

自然な話し言葉を使いつつ、悲しみを表現する。これがシナリオの難しさであり、醍醐味だったりします。

書き言葉・話し言葉

それぞれ書く時、小説は書き言葉シナリオは話し言葉になります。

似ているようですが、微妙に違うんですよね。

これは「読者にどの形で届くか」に起因します。

小説は本になり、文字媒体で読者に届きます。

シナリオは映像化されるため、音声として視聴者に届きます。

日常会話にないセリフが出ると、シナリオだと不自然。

一方、リアルな会話を小説に持ち込むと「誰が喋っているのかわからない」という事態に陥ります。
※シナリオでも「誰が喋ってるかわからない」現象は起きますが、映像がある分、見分けがつきます。

この微妙なニュアンスを書き分けられると、それぞれのセリフに深みが出ますよ。

作品の決定権

小説は作者一人で完結しますが、シナリオは一人では完成できません

小説は書き終えたら終わりですよね。修正指示があるとしても、基本的には担当者か編集長くらいでしょう。

一方、シナリオは携わる人が多い。

大抵は撮影前に企画会議をします。監督・スタッフといった制作陣。場合によっては、出資元のスポンサーやテレビ局が絡むでしょう。

多数のスタッフに囲まれて、シナリオを揉み直しします。

建設的な意見もあれば、中にはトンチンカンな修正指示も。どんなにこだわって書いても、理解されなきゃ変更に。また、上の意向に沿っていないと、容赦なく書き直しです。

最終的な脚本の決定権はスポンサーやプロデューサー、監督や全体での総意となるでしょう。

もし「自分の作品にアレコレ言われたくない!」と思うなら、脚本家は諦めましょう。こだわりが強い人は、小説を書いた方が幸せです。

売れる必要性

シナリオには、たくさんの人が関わります。

撮影スタッフだけでなく、宣伝広告スタッフ。映画なら配給元や劇場スタッフ。テレビならテレビ局。もしDVDになれば、DVD制作会社やレンタル業界も絡むでしょう。

映像作品は、多くの人が動きます。そのため、多くの人の生活を支えるためにも、売れる作品が求められるのです。

近年、人気漫画のアニメ化や映画化が多いですよね。あれは一定数のファンがおり、ある程度の収益が見込めるため。つまり「すべらない」から漫画原作の作品が増えたのです。

小説はそこまでシビアではありません。大ヒットしたらメディアミックスで盛り上がりますが、書籍だけなら映像作品ほど人は動きません。

もちろん両メディアとも売れた方がよいです。しかしシナリオは小説以上に人が動くので、より売れるものが求められる傾向にあります。

大多数の人に好かれるか

作品の内容として、大衆受けにも大きな違いがあります。

シナリオは大衆受けを狙う必要があります。

映像作品は、多くの人の目に触れます。映画なら数万人、テレビなら数十万人と、見る人の桁が異なります。

そのため、大多数の人に愛される必要があります。

特に映像は受動的に楽しめる娯楽。不愉快な内容であれば、すぐさま視聴をやめてしまうでしょう。

内容・主人公ともに「多くの人から愛される」がキーワードとなります。

一方の小説は、尖っている方がよい。

読書は能動的に楽しむ娯楽。また、読者&本との対話です。

小説は「いかに感情移入できるか」が鍵となります。

読んでいて「この主人公は私自身だ」と思わせられたら勝ち。読者は物語に没頭してくれるでしょう。

「私自身だ」と思ってもらうには、汚い部分もありありと書く必要があります。

「人は綺麗な部分だけじゃない」とわかっているので、生々しい本音を曝け出されると共感できるのですよね。

もし「汚い部分は隠したい」「綺麗なことしか書きたくない」と思うなら、シナリオを書きましょう。上っ面だけの小奇麗な小説は、人の心に何も残せないことを覚えておいてください。(ただ悲しいかな。こんな本が売れたりしているのが現実だったりしますがね)

小説とシナリオはまったく違う

小説とシナリオの特徴は、次の通りです。

  • 小説:単独で完結する文学作品
  • シナリオ:チームで作品を作るための設計図

その上で、次のような違いがあります。

  1. 映像にできるか
  2. 心情が直接書けるか
  3. 書き言葉・話し言葉
  4. 作品の決定権
  5. 売れる必要性
  6. 大多数の人に好かれるか

基本的な土台は同じです。しかし細かい部分や求められるものが違うので、それぞれの特徴を押さえておくとよいでしょう。

小説とシナリオ、お互いにそれぞれのテクニックを使用できると、作品を深みが出ます。

ぜひ沢山の作品に触れて、違いを読み取ってくださいね。

参考記事

戯曲とシナリオの違いについてまとめました。

戯曲は特殊な立ち位置です。本記事に沿って解説すると、次のようになります。

  • 書き方:シナリオ形式(演劇脚本)
  • ジャンル:文学作品
  • 評価:単独

▼戯曲の詳細はこちら

戯曲・脚本(シナリオ)・台本の違いとは|演劇・撮影用語

ゲームシナリオの特徴をまとめました。

ゲームシナリオは、通常のシナリオが通用しない場面が多いですね。しかし知っていて損はありません。

強いていうなら、ゲームシナリオはYouTubeシナリオやラノベに近いかも。

▼ゲームシナリオの特徴はこちら

ゲームシナリオの特徴とは|小説、シナリオ・脚本との違い

宮本くみこ
ライター
小説・シナリオ・エンタメを愛しています。小説書けずに苦節20年→脚本修行のため公務員辞めて上京→なんか違うと絶望→小説の真髄発見。普段は占いライターしながら小説・シナリオを書いてます。目標は国際アンデルセン賞受賞。「私自身が最高の物語」と自負してます。
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