「小説を書いてみたいけど難しそう」「初めてだけどどうやって小説を書けばいい?」という相談をよく受けます。いきなり小説を書くのは心理的ハードルが高いですが、実は初心者にも書きやすい作品スタイルがあります。
本記事では初小説を書くのにおすすめな作品スタイルをご紹介します。参考作品もご紹介するので、行き詰ったらお手本にしてくださいね。
初心者にオススメな作品スタイル4つ
初心者は以下のいずれかで書くと小説が書きやすいです。
- 日記
- 手紙
- スピーチ
- 回想
一つずつ説明していきますね。
日記形式
一番簡単なのは日記です。「私はこう思った」「今日はこんなことがあった」など、私視点で出来事や感想を書き連ねます。
一日分の情報量は少ないですが、積み重ねると立派な作品になります。一気にたくさん書けない人や悩みながら少しずつ書きたい人に特にオススメなスタイルです。
ただ書く上で、2つ注意事項があります。
- 日記を書く目的を明確にすること
- ルールを貫くこと
何でも書けるがゆえに書きすぎてしまい「結局何が言いたいかわからない作品」になる恐れがあります。
だから書く前に「どんな日記か」「どれくらい書くか(ゴール)」を明確にし、遵守しましょう。
例えば「今は亡き祖母との思い出」と決めたら、祖母との思い出を主軸に記載します。そこで当時ハマったテレビについて書くのはちょっと違うかと。祖母とのエピソードや当時の世相を反映するなどの効果があれば別ですが、無目的に書くと主題からズレてしまいます。
また祖母との思い出が十年分あったとして、全部書くと膨大な量になりますよね。そこで「死の半年前」「各年で特に記憶に残ったこと」などの時期、もしくは「恋バナ」「お出かけした時のこと」など、特定の場所や話題といったテーマを持たせることが書きやすくなります。
ちなみに上記は自伝を書く時のルールと共通しています。日常生活で書く文章の延長上にある文芸ジャンルであるため、初心者にも書きやすいといえます。
実際に書いて学んだ注意事項をまとめています。
→【小説・自伝向け】日記形式の作品を書くコツまとめ
参考作品:嘔吐
哲学者サルトルが小説に挑んだ代表作。難解で読みにくいかもしれませんが、思考がたゆたう様子を作品に昇華させた貴重な作品です。
参考作品:アンネの日記
小説というよりノンフィクションですが、小説を書く時の参考になるかと。一日分の情報量や書き手の状況を決める時の参考にしてください。
手紙
メールなど日常生活でも手紙を書く機会が多いため、小説初心者にも馴染みがあるスタイルです。日記同様、手紙も一度に多くを語らないため、短編や毎日コツコツ書きたい方にオススメです。
手紙スタイルで書く時の注意点は以下の通りです。
- ルールを決める
- 執筆スタイルを決める
手紙には一方的に送るものと、両者のやりとりを併記するものがあります。まずどちらになるか決めましょう。「一方的なんて寂しい」と思うかもしれませんが、出せなかった手紙なんてたくさんあります。恩人への報告の手紙だと思って書くのも良さそうですね。
そして重要なのが、手紙だけでは100%作品背景を伝えづらいということ。
冒頭に手紙をやりとりすることになった経緯とか、手紙を書く人(主人公)の立ち位置を書いた方が読者はスムーズに理解できます。
あと、手紙ですので「自分が知ってる以外のことは書けない」ということにも注意。
「これは人から聞いたんだけど」「噂では」といった形で、伝聞を使うと説明っぽさが抜けます。
参考作品:あしながおじさん
私が小説初心者に真っ先に紹介する作品。冒頭に手紙を出す経緯説明があるだけで、あとはすべて主人公の手紙だけで物語が展開していきます。情報の出し方が素晴らしい。本当に女子が書いたような瑞々しい作品で、これを意図して書いたなら作者は天才だと思いました。
もちろんそこまで真似る必要はないのですが「こんな感じで書けばいい」とイメージしやすいはずです。
参考作品:人間椅子
婦人宛に不気味な手紙が届くことで始まる本作。最初と最後は手紙の読み主である婦人のことが書かれていますが、物語の大半は手紙の内容で構成されています。手紙では主義主張を書いたり秘密の告白をしたりと、結構やりたい放題できるのがポイント。読後、読んだ相手に大きな変化を与えてスッキリ終わらせるのがよいでしょう。
スピーチ
目の前にいる読者に向かって語りかけるように書きます。スピーチの原稿に近いかもしれません。なんだか難しそうですが、多くの児童文学で使われるスタイルです。つまりは一人称なのですが「話すように」というのがポイント。話すことは日常的に行うため、書くハードルがグッと下がります。
これには2種類あって、主人公自身が語るスタイルと第三者が語るスタイルがあります。主人公の場合は自分の感情や思いが書きやすいし、第三者だと何でも知っているスタイルで書くこともできます。三人称っぽいですが、語り手として第三者が存在するため一人称っぽく書けます。これは作品によって合う合わないがあるので、使い分けるのがベターですね。
書く上での注意事項は1つ。絶対にブレないこと。キャラもですし、語り調子も変えないように注意しましょう。
ただ書いてる最中は見失いがちなので「推敲時に直せばいい」くらいの気構えで書いてみてください。
迷った時はぬいぐるみに向かってあなたの作品をお話ししてあげてください。自然に話せたら大成功です。
参考作品:りこうすぎる王子
私が大好きすぎる作品。ですます調の優しい語り口&善意の第三者による眼差しがユニークです。中身はひん曲がってますが王道な童話調なので、学ぶところは多いはずです。
参考作品:宇宙戦争
主人公による語りスタイルはたくさんありますが「ブレない」という点で宇宙戦争は秀逸。「この分量を一気に語っているのか!」と思うほどに話の主軸がしっかりしています。日記スタイルにも近いので、ダブルで参考になるでしょう。
回想
過去の出来事を思い出して書くスタイル。日記に近いですが、日記と違って大雑把な話を語り口調で書けるのが魅力です。「インタビューされてどう答えるか」をイメージするといいでしょう。
回想での注意事項は、以下の2つ。
- 時間軸をはっきりさせる
- 順番に話す
作者は回想(過去の話)だとわかっていますが、読者は知りません。だからいつの話をしているのか、わからなくなります。10年前の話をしていたのに急に去年に話になったりと、時間が飛ぶとよりややこしくなる。そんな時は一気に過去に戻って時系列順に書くとスッキリするでしょう。
参考作品:フォレストガンプ
映画作品ですが、この構成は秀逸すぎる! 普通に面白いので見てほしいですね。
冒頭が現代で、主人公がいきなり過去話をします。どんどん時代が戻って、ラスト前で現代(語っている今この場)に繋がります。ちなみに時々話が現代に戻るのも大きなポイント。
若年層の自分史としても秀逸な構成なので、ぜひ映画をご覧ください。
参考作品があると小説は書きやすい!
ごちゃごちゃ書きましたが、細かいことは気にせず書いてOK。書き慣れた人は別ですが、初心者ならまずは書いて「自分にも書ける!」と実感してほしいです。文章的なものは後からいくらでも直せるので、まずは書いてみましょう。参考作品があると書きやすいので、ぜひ本記事で紹介した本を手に取ってみてくださいね。
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