翻訳家になりたい!
小説家ながら翻訳家としても活躍する作家さんを見ると、翻訳業に携わりたくなります。
「普段小説を書いているから、案外できるのでは?」
「微妙な表現が上手かも!」
そう期待していましたが、翻訳家のインタビューを聞いて諦めました。
本記事では、私が翻訳家を諦めた理由をもとに、翻訳家に必要なものをご紹介します。
なお、本記事は文芸分野での翻訳を想定しています。
ビジネス文書とは異なりますので、その点ご了承ください。
私が翻訳家を諦めた理由
「翻訳家ムリだ」と思った理由は、歴史文化に疎いから。
恥ずかしながら、私は翻訳を「文字を日本語にするだけ」と思っていました。
しかし本当に必要なのは「現代日本人が理解できるように書き下すこと」。
言葉だけじゃなく、風俗文化も理解できないですよね。
それが歴史ものになれば、歴史の知識も欠かせません。
翻訳対象となる国に関する、広くて深い知識が必要なのです。
例:翻訳の注釈を作る
先日、トム・ソーヤーの冒険を読みました。
読むとわかるのですが、トムはくだらない迷信を信じています。
そして迷信に則った行動をし、とんでもない展開を迎えます。
現代人の私たちから見れば、愚かな行為に見えるでしょう。
しかし当時は、迷信が強く信じられていました。
だから当時の人としては、ごく自然なことだったのです。
(もちろんトムのやりすぎ感もありますが)
「迷信に左右されること」自体は、理解できるかと思います。
いかにもな迷信が出てきたら、「迷信だな」と理解できるでしょう。
しかし迷信は、文中にもさりげなく組み込まれています。
当時では当たり前すぎて、何気ない会話や行動に織り込まれているのですね。
事情を知らずに読むと、「何これ?」と疑問に思うでしょう。
現代人が読んでわからないところを補足してくれるのが、翻訳家の仕事です。
調べたり専門家に聞くなど、私たち代わって調べ、先回りして注釈を作ってくれるのです。
「調べるだけ」と思いがちですが、「これは注釈を付けなきゃいけない」と見極めるのも、翻訳家の務め。
見落とすと、読者にとって理解不能な作品となるため、重大な仕事です。
作品内の風俗文化を見つけるには、各国の知識が必須。
歴史だけでなく、文化・思想・風俗・流行・習慣・言い回しなど、様々な知識が必要になるでしょう。
「その国について極めよう!」という愛情や熱意がなければ、よい翻訳ができないと悟りました。
翻訳家になるには、その国に対する愛情を持とう
本記事のまとめは、次の通りです。
- 翻訳は「現代日本人がわかるように」書く必要がある
- 翻訳家はその国に対する広く深い知識が必要
- 注釈作りは、翻訳家のさじ加減
ただ訳すだけなら、翻訳アプリを使えばいい。でも理解するには、言葉以外の要素が必要になる。
だから翻訳家に依頼するのですね。
翻訳家には「~文学専攻」など、専門家が多いのも納得できました。
浅学な高卒には、とてもじゃないけど無理そう。
もちろん素人が慣れないわけではありません。
ただ私の場合は、諦めて私の作品を書いた方がよいと判断しました。
次に海外文学を読む時は、ぜひ翻訳者たちの苦労を感じてみてくださいね。
推薦図書:文学こそ最高の教養である
本記事の内容に至ったきっかけは、紀伊國屋書店新宿本店で開催される「光文社古典新訳文庫」の各巻発売イベント。そのインタビューをまとめたのが本書。
過去回のインタビューまとめで、聞き逃した身としては、嬉しい一冊です!